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有聲日語:さそりのおほしさま

  ある暑い砂漠の國に一匹の蠍が住んでいました。見渡す限りの広い広い空の下、どこまでも続く白い砂が小さな蠍のお家でした。その広いお家で、小さな蠍は獨りぼっちでした。なぜなら、彼は大きな生き物も怖がる恐ろしい毒をもっていたからです。

  晝間の砂漠は焼けるような暑さ。ぎらぎらとお日様が燃えているので、蠍はお空を見ることもできず、じっとしたを向いています。そんな蠍も夜になるとたくさんの聲に囲まれるようになります。獨りぼっちの小さな蠍でしたが、微かな微かな星たちの聲を聞いている時は寂しくありませんでした。

  「あー、あのお星様に少しでも近づくことはできないかな。」

  そう思った時でした。さくさくと、何かが砂を踏む音が近づいてきます。見上げると、このあたりには珍しい白い色の肌をした少年でした。蠍はこっそり青く光る涼しい目がお星様のようだなと思いました。

  「君はいつも僕たちを見ているね。」少年はそう言うと、白い手で蠍をそっとつつみました。

  「今夜は月もない、僕たちだけの特別な夜だから。」そして、さくさくとまた歩き出します。

  著いた場所にはたくさんの不思議な物たちが集まっていました。少年と同じ白い肌の人、大きな動物たち、見たこともない生き物。そして、大きな大きな蠍にも出會いました。小さな蠍は大きな蠍にたくさんたくさんお話をしてもらいました。

  蠍はお話をしながら、ずっとずっとここにいたいと思いましたが、夜も更けてきて、だんだん眠たくなってしまいました。

  うとうとする蠍にまたあの少年の聲が聞こえてきます。

  「明るい晝も、暗い夜も、雨の日も、嵐の日だって、僕たちはいつでもここにいるよ。見えなくてもここにいるんだよ。それを忘れないでね。」

  朝、目が覚めると、いつものように獨りぼっちの蠍がいました。けれども、ぽっかりあった寂しい気持ちはいつの間にか消えて、代わりにぽわっと優しい小さな火のような暖かいものが自分の中で燃えているのを感じていました。

  「あ、お星様だ、僕の中にお星様がいる。」小さな蠍はそう思いました。

  「大きな広いお空にもどこまでも続く砂漠にも同じようにお星様がたくさんいるのかもしれない。」そう思ったらじっとしてなんかいられません。小さな蠍は元気よく白い砂漠を走り出しました。

  お仕舞い。

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