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日文古典名著-かぐや姫の告白(四)

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  【かぐや姫の告白】

  (四)

  これを聞きてかぐや姫は、「さしこめて、守り戦ふべき下組みをしたりとも、あの國の人を、え戦はぬなり。弓矢して射られじ。かくさしこめてありとも、かの國の人來ば、皆あきなむとす。相戦はむとすとも、かの國の人來なば、たけき心つかふ人も、よもあらじ」。翁の言ふやう、「御迎へに來む人をば、長(zhǎng)き爪(つめ)して、眼(まなこ)をつかみつぶさむ。さが髪を取りて、かなぐり落とさむ。さが尻をかきいでて、ここらの公人(おほやけびと)に見せて、恥を見せむ」と腹立ちをり。

  かぐや姫いはく、「聲高になのたまひそ。屋の上にをる人どもの聞くに、いとまさなし。いますかりつる志どもを思ひ知らで、まかりなむずることの口惜しうはべりけり。長(zhǎng)き契りのなかりければ、ほどなくまかりぬべきなめりと思ふが、悲しくはべるなり。親たちの顧みをいささかだに仕うまつらで、まからむ道も安くもあるまじき。日ごろもいでゐて、今年ばかりのいとまを申しつれど、さらに許されぬによりてなむ、かく思ひ嘆きはべる。御心をのみ惑はして去りなむことの、悲しく耐へがたくはべるなり。かの都の人は、いとけうらに、老いをせずなむ。思ふこともなくはべるなり。さる所へまからむずるも、いみじくもはべらず。老い衰へたまへるさまを見奉らざらむこそ、戀しからめ」と言ひて、翁、「胸痛きことなしたまひそ。うるはしき姿したる使ひにもさはらじ」と、ねたみをり。

  (現(xiàn)代語訳)

  これを聞いてかぐや姫は、「私を閉じ込めて守り戦う準(zhǔn)備をしたところで、あの國の人に対して戦うことはできないのです。弓矢でもってしても射ることはできないでしょう。このように閉じ込めていても、あの國の人が來たら、みな開いてしまうでしょう。戦おうとしても、あの國の人が來たら、勇ましい心をふるう人もきっといなくなるでしょう」。翁は、「あなたをお迎えに來るその人をば、長(zhǎng)い爪で眼をつかみつぶそう。そやつの髪の毛を取って、かきむしって落としてやろう。そやつの尻をひんむいて、大勢(shì)の役人たちに見せて恥をかかせてやろう」と腹を立てている。

  かぐや姫が言うには、「聲高におっしゃいますな。屋根の上にいる人たちが聞くと、たいそう具合が悪い。お爺さん、お婆さんのこれまでの心盡くしを思い知らないかのようにお?jiǎng)eれするのが、何とも殘念でございます。この世に長(zhǎng)くとどまるという前世からの宿縁がなかったために、まもなくお?jiǎng)eれしなくてはならないのが悲しいのです。親たちの世話をわずかも致さず帰っていくその道中も、私の心は安らかにはなりますまい。この幾日かの間も、端近に出て座って、今年いっぱいの猶予を願(yuàn)ったのですが、どうしても許されず、思い嘆いています。お爺さん、お婆さんのみ心をばかり悩まして去ってしまうのが、悲しく耐え難く思います。あの月の都の人は、たいそう華やかで美しくて、老いることは実はないのです。思い悩むこともありません。そのような所へ戻りましても、殊更にうれしくもございません。お爺さん、お婆さんが老い衰える姿をみて差し上げられないのが何よりも心殘りで、戀しゅうございましょう」と言うと、翁は、「胸が痛くなることをおっしゃいますな。立派な姿の月の國の使者であろうと、じゃまはできまい」と、いまいましがった。

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