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日文古典名著-かぐや姫の昇天(二)

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  【かぐや姫の昇天】

  (二)

  「かくあまたの人を賜ひてとどめさせたまへど、許さぬ迎へまうで來て、取り率(ゐ)てまかりぬれば、口惜しく悲しきこと。宮仕へ仕うまつらずなりぬるも、かくわづらはしき身にてはべれば。心得ずおぼしめされつらめども、心強く承らずなりにしこと、なめげなるものにおぼしめしとどめられぬるなむ、心にとどまりはべりぬる」

  とて、

  今はとて天の羽衣著るをりぞ君をあはれと思ひいでける

  とて、壺の薬添へて、頭中將(とうのちうじやう)呼び寄せて奉らす。中將に天人取りて伝ふ。中將取りつれば、ふと天の羽衣うち著せ奉りつれば、翁をいとほしく、かなしとおぼしつることも失せぬ。この衣著つる人は、もの思ひなくなりにければ、車に乗りて、百人ばかり天人具して上りぬ。

 ?。ìF代語訳)

  「こんなに大勢の人をお遣わしくださり、私をお引きとどめようとあそばされましたが、拒むことのできない迎えが參り、私を連れて行ってしまいますのを、無念で悲しく思います。宮廷に出仕できずに終わってしまいましたのも、このように面倒な身でございましたので。ご納得できずお思いあそばされましたでしょうけれど、帝のお言葉を強情にお受けせず、無禮な者とお思いになり御心におとどめなさっていると、心殘りになっております」と書き、

  <今はお別れと天の羽衣を著るときになってはじめて、あなた様をしみじみ思い出します。>

  と書き加え、壺の薬を添えて、頭中將を呼び寄せて獻上させようとした。頭中將に天人が手渡した。頭中將が受け取ると、天人がいきなりさっと天の羽衣を著せたので、かぐや姫のこれまで翁をいたわしく、いとしいと思っていた気持ちが消えてしまった。羽衣を著たかぐや姫は、憂い悩むことがなくなってしまい、そのまま車に乗り、百人ばかりの天人を引き連れて、天に上ってしまった。

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