小さい頃からわたしは同じ區(qū)內(nèi)に住む祖父母に預(yù)けられることが多かった。両親は共働きで四つ年の離れた姉は運(yùn)動(dòng)部の練習(xí)が忙しく、幼いわたしが一人で家にいることが多かったからだ。

　　祖父母は小さい町工場(chǎng)を経営していて、わたしは祖母に連れられて小學(xué)校時(shí)代の夏休みや冬休みの大半をそこで過(guò)ごした。祖父母がそれぞれの仕事でかまってくれなくても社長(zhǎng)室の神棚の下に置かれた古い勉強(qiáng)機(jī)に座り、作業(yè)している祖父の背中を見(jiàn)ているだけで楽しくてしょうがなかった。

　　祖父は普段は無(wú)口で厳しい人だったが末っ子のわたしをとても可愛(ài)がってくれた。小さいわたしを膝の上に乗せ、作業(yè)しているところをよく見(jiàn)えるようにしてくれながらぽつりぽつりと昔旅行したときの話や、満州に住んでいた頃の話をしてくれた。わたしはそんな時(shí)間が大好きだった。

　　祖父に癌が見(jiàn)つかったのはわたしが小學(xué)校の高學(xué)年になった時(shí)だった。入院してしまった祖父の病室にわたしはしょっちゅう遊びに行き、一緒にテレビを見(jiàn)て過(guò)ごした。祖父はベッドの上でもたくさんのことを教えてくれた。

　　心配した手術(shù)は成功したけれど、それからも祖父は再発を繰り返した。つらかったはずなのに、祖父は退院するたびに工場(chǎng)で仕事をしていた。一回り小さくなった背中が必死に作業(yè)するのを見(jiàn)るのがつらくて、わたしはだんだん工場(chǎng)にいかなくなった。

　　中學(xué)校に入った頃にとうとう病気がもうどうしようもなくなって、あんなに大好きだった工場(chǎng)を閉めて、祖父は病院のベッドから起き上がれなくなった

　　うとうとすることが多くなって、家族の識(shí)別をすることすら難しくなった。わたしは何もできなかったから、やっぱり祖父のベッドの橫に座って、見(jiàn)えているかわからないテレビを一緒に見(jiàn)た。

　　ちょうどその日は祖母と母が買(mǎi)い出しに出かけていて、わたしは寢ている祖父の橫で一人文庫(kù)本を読んでいた。

　　ちーちゃん、と祖父が呼ぶのが聞こえて、わたしはびっくりして文庫(kù)本を落としてしまった。二人姉妹の年の小さい方だから、ちーちゃん。祖父にその名前で呼ばれるのは久しぶりで、なぜだか泣きそうになった。

　　ちーちゃん、來(lái)たのか、と祖父はうとうとと微笑みながら言った。うん、來(lái)たよ、と答えて慌てて手を握ると、ちーちゃん、と祖父がゆっくりともう一度呼んだ。なぁに、と無(wú)性に出てきそうになった涙をこらえて返事をするとそれを見(jiàn)透かしたかのようにちーちゃんは泣き蟲(chóng)だから、と祖父は言った。ちーちゃんが泣いてるんじゃないかっておじいちゃん心配なんだよ、と。

　　ちーちゃん、つらい時(shí)は笑いなさい、と祖父は言いながらぎゅっとわたしの手を握り締めた。つらくても笑っていればちゃんといいことががあるから、だから、約束だよ、笑ってなさい、と祖父は繰り返して、わたしは何も言えずにただ泣かないように必死だった。

　　それから少しうわごとのように話した後、祖父はうとうととして、それから一ヶ月もしない間に亡くなった。泣き蟲(chóng)だったわたしは、葬儀で家族が泣き崩れる中、一度も泣かなかった。

　　つらいことがあると今でも思い出す。工場(chǎng)で作業(yè)する祖父の膝の上に乗っていた幸せだった時(shí)を。約束だよ、と心配そうに握られた手の感觸を。どんなにつらくてもおじいちゃんが心配するから泣いてたまるか、と思う。歯を食いしばって頑張れる。

　　おじいちゃん、今日も頑張ってるよ、とわたしは笑う。

　　笑った先で、きっと本物の笑顔のわたしが待っている。そう、信じて。